愛し沼の底

歪みかわいいコレクション

九割は空気、一割が白砂糖

九割は空気、一割が白砂糖

 

夜店で並べられている綿菓子とそれはよく似ている

奇麗な袋の中に入道雲がぱんぱんに詰まっているようで

みんな思わず汗ばんだ小銭を投げてしまう

もっと大切な物を買える機会を差し出して

ぎらぎらまなこで手を伸ばす

けれど綿菓子は殆ど空気で出来ているし

その上のこりかすは下賤な白砂糖を固めただけ

眺めてみているとき 金を払うとき 手に入れたとき

その三つは幸せな気持ちになるだろう

しかし空気に触れた瞬間に綿菓子はしぼみ始める

現実に汚染されるように縮こまって見るも無残に

それなら綿菓子は手に取らず眺めているほうがいい

多分、欲望をあおられている酔いのこと

し × × せ と呼んでいるだけで

これ以上なく満ち足りるほどのものは

誰も売ってはくれないさ

誰にも盗られないよう食べてしまうに違いない

それは後味にも残らず不思議と身体に染み込むのさ

じゃりりと歯の溝にはさまって

ずっと甘い傷みたいに主張したりしない

あと幾つ ぼくは綿菓子買えるだろう

夜店で並べられている綿菓子とそれはよく似ている

四文字のそれにひどくよく似ている

ぼくが食べたことのない それのことを知らないから

予想に過ぎないのだけれど 似ているのではないかと思った