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愛し沼の底

歪みかわいい集め

信じたさから、濁る心根

女性に「僕たちは〜」と叫ばせて、男性に「アタシの気持ち〜」とぼやかせる。私の嫌悪する歌たちのことから話します。

 
共感できる気持ちいい言葉を異性の口から聞きたいという願いが込められいる。自らの気持ちを歌っているのではなく、歌わせられているという事実に気づいていない。気づかないふりをして聞き続けるのは心地の良いことだ。世界に自分は一人ではないような気がする。耳からやってくる沢山の声に励まされ癒される。自分の隣には多くの理解者が在ると信じる。
 
しかし、それは幻想で「自分だけの応援者たち」という思い込みをしているにすぎない。まるで自分のような人間が本当には自分の隣にいる人で、きらきらした人には永遠に理解されず、きらきらした人の心もわからないままに終わっていく。僕たち私たちが真に輝いている者ならば、そういった人たちに理解されたいと思う必要はないのだ。理解されたいと考え始めた時点で私たちは負け劣りを感じ、気持ちはやすりがけされ、輝きを失う。
 
わかられたいと思わなくて良いような逞しい人間は美しい。孤独をただ「一人である」と受け入れて、自分を信じられる人は強い。寄り添い合わなければ生きていけない人間より現実と限界をわかっている。その段階にある人間のいう「案外すてたものじゃない人間たちのこと」が、心地よく感じる。私の感性はどれだけ世の中が寂しいものでも最後に人が残っているような世界だ。そして、またそういう幻想を植え付けるように歌う人がいる。
 
自分の都合の良い世界のように見える眼鏡の役目をする経典たちがなければ人は生きられない。歪みある世界のあり方が本当のもののように思うときに、正しい世界のあり方は気持ちの悪いぐにゃぐにゃの偽物に感じられる。歌だけが僕たちとアタシの本当で、聖書のように繰り返し読み聞きする。時には書き写し覚える。
 
信じることが良いことだと言われるけれど、強く頑なになった考えは、自分だけを守り動けないようにする。何事も本当のものはない。疑心暗鬼で世界を守ろう。