愛し沼の底

歪みかわいい集め

有償交換の愛と無償生産の愛

見返りを求めない関わりはない。己のごとく、他者を愛することしかできない。二つで一つのような自分と地続きの物だけを心に入れられる。しかし生きている以上、赤ん坊のままでいられない。立って歩き、排泄を自分で行い、物心がつくころには人間の孤独が始まる。親は子供のものでなくなるように子供もまら親のものではなくなる。

 
無償の愛は壮大な思い違いの生むものだ。執着や意地などといったものたちを叙情的に飾り立てているにすぎない。人間は自分自身の他には愛することはできないのだ。美しい愛は自己愛ただ一つのみである。
 
私は自己愛の深い人が好きだ。その懐に潜り込み、自分をなくしてしまえたのなら、きっとその人は私を深く深く愛するだろう。アンコウの雄のように腹の一部として取り込まれて生きる。自分を愛せない自分を捨てて、流されていくのはとても気持ちが良いことに違いない。
 
店員や教師や友人を、金や労力で買う人の数を涙の数と同じにしなくても良くなるのだ。勘違いではない本当の、純度の高い愛の中で生きていける。
 
有償交換の愛と無償生産の愛。
 
自分自身で生み出せるものがないなら、他人の腹に寄生して生きよう。自己愛だけは最後まで残るものだから、私が対象に利益を与え続けられるのなら、愛は滅びない。