愛し沼の底

歪みかわいい集め

姉の携帯は涙で溺死した

姉が恋人と別れた。姉は私の三倍は面倒くさい統合失調がちの女だ。たまに楽しい歌が空から降りてくるらしい。そういう自分を恥ずかしく思っていて隠そうとするものの隠しきれない人である。空気は読めないものの言葉を言葉通りに受け取る素直な性格をしていて、付き合った男のいいなりになって男がいなければ生きていけないような生き物だった。

姉は海なら回るお寿司とか水族館とか小学生の遠足のようなレジャーが好きだ。私は買い物と買い物と美味いものが大好きなので、姉のそういうところはかわいらしいと思っていた。それこそ付き合っている時間そのものを大切にしているようだから、いじらしい。

恋人さんは学生の間は質素な遊びで満足していたのだが、彼の悪い友人に引きずられてクルーザーパーティーが好きな男になってしまったらしい。そんな男が好きではない姉ははじめて自分から別れを告げたそうだ。

そんな姉の電話は涙で汚染されて壊れてしまった。悲しい涙は塩っぽいという。アイフォンも溺れるほどの涙をだれかのために流したことがない。私の涙は血となり肉となり、むくみになる。思い切り何もかも投げ出して誰かを愛することは疲れる。だが、その馬鹿みたいなことに私は憧れている。

馬鹿みたいに生きたい。全身全霊で自分のまま愛したり憎んだり、形のないものを求めてみたい。