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愛し沼の底

歪みかわいい集め

足しげく

新しい靴を買うと靴は必ずどこかに連れて行ってくれる。外へゆくために靴はあるものだ。

ローファーが学校に一緒に行ってくれたし、似合わない街におしゃれな靴は連れ出してくれた。それは半ば攫われているような高揚感だった。他の何者が私を押し込めたとしても、靴だけは行こう行こうと手を引いていく。新しい靴があればどこまでも行ける気がする。

憧れはいつも赤い靴だ。燃える魂の色をした、目をつぶすほどの太陽の輝きをした色、マグマのように盛った熱。そのような靴を履いているときの私は無敵だ。焦がしながら焦がされながら私と靴は世界の果てまで歩いていく。新しい靴を探すために旅に出る。

私がボロになる代わりに靴は萎びて泥だらけになってくれる。誹謗や中傷や都合の悪いことを背に受けて、行けるところまでいっしょに行こうとする。そんな靴を捨てるとき、金具を剥がしてばらばらにするときに、沢山の生きたいが溢れ出す。ここまでやってきた私を、まだまだこんなものじゃないと引きちぎって新しい靴を履く。

外へ行こう。足が磨り減ってなくならないように、沢山の靴の亡骸を積み上げる。

今週のお題「私の一足」