愛し沼の底

歪みかわいいコレクション

猫の居る部屋

生活の臭いがそこかしこに漂っていた 黴臭い部屋干しのタオルがすだれのようにかかっている 初めて訪れた部屋なのに生活は計り知れる程度の つまらない男に身を任せた その行為は計り知れる程度の面白みしか得られなかった 安板のベッドはきいきい鳴いた 男…

九割は空気、一割が白砂糖

九割は空気、一割が白砂糖 夜店で並べられている綿菓子とそれはよく似ている 奇麗な袋の中に入道雲がぱんぱんに詰まっているようで みんな思わず汗ばんだ小銭を投げてしまう もっと大切な物を買える機会を差し出して ぎらぎらまなこで手を伸ばす けれど綿菓…

マンディアルグ「仔羊の血」~あたしは血まみれの子羊よ

マルスリーヌ・カインは被虐の少女として至高だ。アルグの物語には心理描写がない。ただ淡々と残酷な現実が波のように押し迫ってくる。 『ピンク色の子羊さん、青い子羊さん、あたしの護衛になってちょうだい……大きな赤い子羊さん……あたしを助けて……青白い子…

古井由吉「杳子」と姉と私の愚かな病

「杳子」は1971年の芥川賞を得た古井由吉の小説だ。 古井由吉は、内向の世代と呼ばれている。内向の世代は文芸評論家の小田切秀雄が初めて用いた言葉で「60年代における学生運動の退潮や倦怠、嫌悪感から政治的イデオロギーから距離をおきはじめた(当時…